「まさか今から仕事やめてくる」を読んでみた

この間、新聞紙の書評レポートを見て気になっていた「ちょっと今から事業やめて生じる」(北川恵海著、メディアワークス文庫)を読んでみました。
若き主人公隆は、悪徳とも当てはまる会社ではたらくサラリーマン。心身ともに疲れ果てたところ出会った、「同級生のヤマモト」と名づけるメンズと始めるため、隆の店頭生涯は変わっていく……。という対話。
わたくし、若い頃は店頭が嫌で嫌でツボなかったことがあり、駅舎の最前でふらふらしてしまう隆の気持ちははなはだ共感できます。
こういう地下鉄に飛び込んだら、明日から出社しなくていいんだよな、なんて何ごと思ったことでしょう。
隆の最初の風貌に共感できる私のようなリーダーは大勢いるのではないでしょうか。
でも、最前でふらついた隆は「ヤマモト」の戦法によって助かる。
ヤマモトは妖精氏?天のゴッドの使者?こうしたすばらしいやつ、現実にはいないよ〜っ!
あんなヤマモトのようなものは何やら実在しないからこそ、私たちは歯を食いしばり自力でなんとか生き延びるわけで……。
都合のいい会話だよな、と思いつつも、対話におのずと引き込まれて続きを読んでしまうのは、隆のキャラ像が現実かつどこにでもいそうだからこそ同調できて自分投影できるから、なのかな。
途上、隆が事業で非常時に切羽詰まる立場やヤマモトの正体など、期待適う面があったので(しかもとも私の期待ぎゅっと的中だった)、そこは依然著者があまいのかな。それとも、わざわざ分かりやすく書いたのか?
と、以後がしばらく分かってしまうにも関わらず、軽やかに読み切ることができました。
そして最後のやめ。
なるほど、こういうことだったのね。これはさすがに指しなかったわ。
ほんのりできすぎな気もするけれど、プラクティカルではないとは思うけれど、これはある種のファンタジー。
真相もこうなってくれたらいいのにな、なんて言える素敵なエンディング。
生きていくって辛くてしんどくて滅茶苦茶なことばかり。
でも、強要いいことだって起こるよね、と窺える救いのある締めくくりが意外と喜ばしい力作です。
ほとんど、ヤマモトの話す関西弁が実にナチュラルでした。
それもその筈、著者の北川恵海氏は大阪の地元なんですね。